The Model型営業組織が失敗する理由|分業制の限界と部門間連携の改善策


- The Modelを導入したのに、マーケと営業の仲が悪くなった…
- インサイドセールスがアポを取っても、フィールドセールスが商談化しない
- 分業したら、かえって受注率が下がった
「The Modelを導入したのに、マーケと営業の仲が悪くなった」「インサイドセールスがアポを取っても、フィールドセールスが商談化しない」「分業したら、かえって受注率が下がった」——The Model型の営業組織を導入したものの、期待した成果が出ないという声は少なくありません。
The Modelは、正しく設計・運用すれば営業組織の生産性を大きく向上させるフレームワークです。しかし、「分業すれば自動的にうまくいく」わけではありません。分業の「接続部分」の設計を誤ると、部門間の溝が深まり、むしろ成果が悪化するケースがあります。
この記事では、The Model型組織の典型的な失敗パターンを5つ分析し、分業制の構造的な限界を理解したうえで、部門間連携を改善する5つの実践策を解説します。
The Modelとは?分業制の基本構造をおさらい
The Modelとは、セールスフォース社が提唱した営業プロセスの分業モデルです。営業活動を4つの専門チームに分け、各チームが自部門のKPIに集中することで、組織全体の生産性を最大化する考え方です。
チーム | 役割 | 主なKPI |
|---|---|---|
マーケティング | リード(見込み客)の獲得 | リード獲得数、MQL数 |
インサイドセールス(IS) | リードの精査・商談化 | 商談化数、商談化率 |
フィールドセールス(FS) | 商談の推進・受注 | 受注数、受注率、受注金額 |
カスタマーサクセス(CS) | 既存顧客の維持・拡大 | 解約率、アップセル率、NPS |
データの流れ: マーケティング(リード獲得)→ IS(商談化)→ FS(受注)→ CS(顧客維持)
この分業モデルの本質は、「各チームが専門領域に集中することで、全体の効率が上がる」という点にあります。しかし、分業には必ず「接続部分」が存在し、ここの設計が甘いと組織全体のパフォーマンスが低下します。
The Model型組織が失敗する5つのパターン
失敗パターン1:部門間の「溝」でリードが死ぬ
マーケティングが獲得したリードがインサイドセールスに引き渡された後、フォローされずに放置される——いわゆる「リードの死蔵」問題です。
何が起きるか:
- マーケティングが月間500件のリードを獲得しても、ISが実際にフォローするのは200件だけ
- 残り300件は「質が低い」と判断されて放置される
- マーケティングは「せっかく獲得したリードが無駄になっている」と不満を持つ
- ISは「マーケが送ってくるリードの質が低い」と不満を持つ
根本原因: リードの引き渡し基準(何をもって「フォローすべきリード」とするか)が部門間で合意されていない。
失敗パターン2:MQL/SQLの定義が曖昧で押し付け合いが起きる
MQL(Marketing Qualified Lead)とSQL(Sales Qualified Lead)の定義が曖昧なまま運用すると、部門間で「このリードは本当に商談化できるのか」という押し付け合いが発生します。
何が起きるか:
- マーケティングは「資料をダウンロードした人」をすべてMQLとしてISに渡す
- ISは「資料DLしただけで、ニーズがあるかわからない」と感じ、フォローの優先度を下げる
- FSは「ISが設定した商談の質が低い。ヒアリングが不十分」と不満を持つ
- 各部門が「自分たちは仕事をしている。問題は前工程(または後工程)にある」と主張する
根本原因: MQL/SQLの定義が「感覚」で運用されており、客観的な数値基準がない。
失敗パターン3:各部門がKPIの部分最適に走る
各部門が自部門のKPI達成に集中するあまり、組織全体の成果(受注数・売上)が犠牲になるパターンです。
具体例:
部門 | 部分最適の行動 | 全体への悪影響 |
|---|---|---|
マーケティング | リード数を増やすために、ターゲット外の層にも広告を配信 | リードの質が低下し、ISの商談化率が下がる |
IS | 商談化数を増やすために、確度の低い案件もFSに渡す | FSの受注率が下がり、無駄な商談が増える |
FS | 受注率を上げるために、確度の高い案件だけを選り好みする | パイプラインが細くなり、売上目標に届かない |
CS | 解約率を下げるために、不満のある顧客への対応を後回しにする | 顧客満足度が低下し、長期的なLTVが下がる |
根本原因: 各部門のKPIが「自部門の成果」だけで設計されており、「次の部門への貢献」が評価されていない。
失敗パターン4:顧客体験が分断される
分業制の副作用として、顧客から見ると「毎回違う人が出てきて、同じことを何度も聞かれる」という体験が生まれます。
何が起きるか:
- マーケティングのWebフォームで入力した情報を、ISの電話で再度聞かれる
- ISに話した課題を、FSとの初回商談でもう一度説明させられる
- 受注後、CSの担当者が商談の経緯を把握しておらず、ゼロから関係構築が始まる
根本原因: 部門間で顧客情報が共有されていない、または共有されていても次の担当者が確認していない。
失敗パターン5:データが部門ごとにサイロ化する
マーケティングはMAツール、ISはSFA、FSは別のSFAまたはExcel、CSはサポートツール——部門ごとに異なるツールを使い、データが分断されるパターンです。
何が起きるか:
- マーケティングのリードデータとISの商談データが紐づいていない
- 「どのチャネルから獲得したリードが最も受注率が高いか」を分析できない
- 部門横断のパイプラインを一気通貫で可視化できない
- 経営層が全体像を把握するために、各部門からExcelで数字を集める必要がある
根本原因: 部門ごとにツールが分断されており、データの統合基盤がない。
分業制の「構造的な限界」を理解する
5つの失敗パターンを見てきましたが、これらはすべて「分業の接続部分」の設計不備が原因です。ただし、The Modelには構造的な限界もあり、すべての組織に適しているわけではありません。
The Modelが前提とする条件
The Modelが効果を発揮するには、いくつかの前提条件があります。
前提条件 | 内容 |
|---|---|
十分なリード量 | 分業を成立させるには、ISが専任で対応するだけのリード量が必要。月間リード数が50件以下では、ISを専任にする意味が薄い |
標準化可能な営業プロセス | 商談の進め方がある程度パターン化できること。完全にカスタムメイドの提案が必要な商材では、分業の効率が落ちる |
一定の組織規模 | マーケ・IS・FS・CSにそれぞれ最低1〜2名を配置する必要がある。営業チーム全体で10名以下の場合、分業のオーバーヘッドが大きい |
データ統合基盤 | 全部門が同じデータを見られるSFA/CRM環境が必要。ツールがバラバラでは分業の効果が半減する |
分業制が合わないケース
組織の特徴 | 分業制が合わない理由 | 代替アプローチ |
|---|---|---|
営業チーム5名以下 | 分業のオーバーヘッドが大きく、1人が複数役割を兼務するほうが効率的 | 1人が一気通貫で担当し、SFAでプロセスを可視化 |
月間リード数が50件以下 | ISを専任にするだけのリード量がない | マーケとISを兼務、またはFSが直接リードをフォロー |
高単価・長期商談(半年以上) | 顧客との関係構築が重要で、担当者の交代が信頼を損なう | アカウント営業型(1人が一気通貫で担当) |
顧客ごとに完全カスタムの提案が必要 | 標準化が難しく、分業の効率メリットが出にくい | 専門チーム型(商材・業種別にチームを編成) |
ポイント:The Modelは「唯一の正解」ではなく、「一定の条件下で効果を発揮するフレームワーク」です。自社の商材特性・組織規模・顧客の意思決定プロセスに合わない場合は、無理に導入する必要はありません。
部門間連携を改善する5つの実践策
The Model型組織の失敗パターンに該当する場合、以下の5つの実践策で部門間連携を改善できます。
実践策1:MQL/SQLの定義を数値基準で統一する
「感覚」ではなく「数値」でMQL/SQLを定義し、全部門で合意します。
MQL定義の例(数値基準):
スコア項目 | 条件 | 配点 |
|---|---|---|
企業規模 | 従業員50名以上 | +10点 |
役職 | 部長以上 | +15点 |
行動:資料DL | ホワイトペーパーをDL | +10点 |
行動:料金ページ閲覧 | 料金ページを2回以上閲覧 | +20点 |
行動:セミナー参加 | ウェビナーに参加 | +15点 |
MQL閾値 | 合計40点以上 | → ISに引き渡し |
SQL定義の例(数値基準):
条件 | 内容 |
|---|---|
BANT確認 | Budget(予算)、Authority(決裁権)、Need(ニーズ)、Timeline(導入時期)のうち2つ以上を確認済み |
商談化の合意 | 顧客が「具体的な提案を聞きたい」と明示的に合意している |
→ FSに引き渡し | 上記2条件を満たした場合 |
実践策2:部門横断のパイプラインレビューを週次で実施する
マーケ・IS・FS(必要に応じてCS)の代表者が参加する週次ミーティングを設け、パイプライン全体を一気通貫で確認します。
レビューのアジェンダ(30分):
時間 | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
5分 | 今週のリード獲得数・MQL数の報告 | マーケティング |
5分 | MQL→商談化の状況、フォロー漏れの有無 | IS |
10分 | 商談パイプラインの状況、停滞案件の確認 | FS |
5分 | 受注後の顧客状況、解約リスクの共有 | CS |
5分 | 部門間の課題・改善アクションの合意 | 全員 |
レビューのルール:
- 各部門のKPIだけでなく、「次の部門への引き渡し品質」を必ず議題にする
- 「リードの質が低い」「商談の質が低い」という抽象的な不満ではなく、具体的なデータ(移行率、フォロー率、受注率)で議論する
- 改善アクションは必ず担当者と期限を決める
実践策3:SFAで全部門が同じデータを見る環境を作る
部門ごとにツールが分断されている状態を解消し、全部門が同じSFA/CRM上でデータを共有する環境を構築します。
統合すべきデータ:
データ | 入力元 | 参照する部門 |
|---|---|---|
リード情報(流入チャネル・スコア) | マーケティング | IS、FS |
初回コンタクトの記録・BANT情報 | IS | FS |
商談履歴・提案内容・受注/失注理由 | FS | IS、マーケ、CS |
顧客の利用状況・問い合わせ履歴 | CS | FS、マーケ |
統合のポイント:
- MA(マーケティングオートメーション)とSFAのデータ連携を設定し、リードの行動履歴がSFA上で確認できるようにする
- ISがヒアリングした情報(課題・予算・導入時期)をSFAに記録し、FSが商談前に確認できるようにする
- FSの受注/失注データをマーケティングにフィードバックし、リード獲得施策の改善に活かす
実践策4:「リードの温度」を可視化するスコアリング設計
リードスコアリングを導入し、リードの「温度(購買意欲の高さ)」を数値で可視化します。
スコアリングの2軸:
軸 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
属性スコア(Fit) | 自社のターゲットにどれだけ合致しているか | 企業規模、業種、役職、所在地 |
行動スコア(Interest) | どれだけ購買意欲を示す行動をしているか | 料金ページ閲覧、事例ページ閲覧、セミナー参加、問い合わせ |
スコアに基づくアクション:
スコア帯 | リードの状態 | アクション |
|---|---|---|
60点以上 | ホットリード | ISが24時間以内にフォロー |
30〜59点 | ウォームリード | ナーチャリング(メール・コンテンツ提供)を継続 |
29点以下 | コールドリード | 長期育成リストに移行、定期的な情報提供のみ |
実践策5:部門間SLA(サービスレベルアグリーメント)の導入
部門間の引き渡しに関する「約束事」をSLAとして明文化します。
SLAの例:
引き渡し | SLA内容 | 測定方法 |
|---|---|---|
マーケ → IS | MQLを引き渡してから24時間以内にISが初回コンタクトを実施する | SFAの活動ログで自動計測 |
IS → FS | SQL化した商談を引き渡してから48時間以内にFSが初回商談を設定する | SFAの商談作成日で計測 |
FS → CS | 受注後3営業日以内にCSに引き継ぎ情報(商談経緯・顧客の期待)を共有する | SFAの引き継ぎ記録で確認 |
IS → マーケ | 「リードの質が低い」と判断した場合、具体的な理由をSFAに記録してフィードバックする | 月次レポートで集計 |
SLA運用のポイント:
- SLAの達成率を週次のパイプラインレビューで確認する
- 未達の場合は「なぜ守れなかったか」を分析し、プロセスを改善する
- SLAは「罰則」ではなく「部門間の信頼を築くための約束」として運用する
The Modelに向いている組織・向いていない組織
向いている組織
特徴 | 理由 |
|---|---|
営業チーム10名以上 | マーケ・IS・FS・CSにそれぞれ人員を配置できる |
月間リード数100件以上 | ISを専任にするだけのリード量がある |
SaaS・サブスクリプション型ビジネス | リード獲得→商談→受注→継続のプロセスが標準化しやすい |
商談サイクルが1〜3ヶ月 | 分業による効率化の効果が出やすい期間 |
MA・SFAが導入済み | データ統合基盤がある |
向いていない組織
特徴 | 理由 | 代替アプローチ |
|---|---|---|
営業チーム5名以下 | 分業のオーバーヘッドが大きい | 一気通貫型+SFAでプロセス可視化 |
月間リード数50件以下 | IS専任の費用対効果が合わない | マーケ兼ISの兼務体制 |
高単価・長期商談(6ヶ月以上) | 担当者交代が顧客の信頼を損なう | アカウント営業型 |
顧客ごとに完全カスタム提案 | 標準化が難しい | 専門チーム型(業種別編成) |
ツールが部門ごとにバラバラ | データ統合ができず分業の効果が半減 | まずツール統合から着手 |
The Modelの導入を検討する際は、「分業すること」自体を目的にせず、「自社の営業プロセスのどこにボトルネックがあるか」を先に特定しましょう。ボトルネックが「リードの量」なら分業が有効ですが、「提案の質」なら分業よりもスキル強化が優先です。
よくある質問(FAQ)
Q: The Modelを導入したが、マーケと営業の関係が悪化しました。どうすればいいですか?
A: 関係悪化の原因は、ほぼ確実に「MQL/SQLの定義が曖昧」か「部門間のフィードバックループがない」のどちらかです。まずはMQL/SQLの数値基準を両部門で合意し、週次のパイプラインレビューで「リードの質」を具体的なデータで議論する場を設けましょう。感情的な対立は、客観的なデータで解消できます。
Q: インサイドセールスを設置したが、商談化率が低いです。原因は何ですか?
A: 主な原因は3つ考えられます。①マーケティングから渡されるリードの質が低い(MQL定義の見直しが必要)。②ISのヒアリングスキルが不足している(トークスクリプトの整備とロープレが必要)。③ISからFSへの引き渡し基準が甘い(SQL定義の厳格化が必要)。SFAのデータで「どのフェーズで脱落しているか」を特定し、原因を切り分けましょう。
Q: 小規模な営業チーム(5名以下)でもThe Modelは導入できますか?
A: 完全な4分業は推奨しません。5名以下の場合、1人が複数の役割を兼務するほうが効率的です。ただし、The Modelの「考え方」(プロセスの分解、各段階のKPI設定、データに基づく改善)は規模に関係なく有効です。SFAでプロセスを可視化し、ボトルネックを特定する仕組みだけでも導入する価値があります。
Q: The Modelの導入にSFAは必須ですか?
A: 事実上、必須です。The Modelの本質は「各部門のKPIをデータで管理し、部門間の引き渡しを可視化すること」にあります。SFAなしでは、リードの流れ、商談の進捗、部門間の移行率を正確に把握できず、分業の効果を測定・改善できません。
まとめ
The Model型営業組織の失敗は、分業制そのものの問題ではなく、部門間の「接続設計」の不備が原因です。
本記事のポイントを振り返ります:
- 失敗する5つのパターン:リードの死蔵、MQL/SQLの押し付け合い、KPIの部分最適、顧客体験の分断、データのサイロ化。すべて「接続部分」の設計不備が原因
- 分業制の構造的な限界:The Modelは万能ではない。十分なリード量、標準化可能な営業プロセス、一定の組織規模、データ統合基盤が前提条件
- 部門間連携の5つの改善策:MQL/SQLの数値基準統一、週次の部門横断パイプラインレビュー、SFAで全部門が同じデータを見る環境構築、リードスコアリング設計、部門間SLAの導入
- 向き不向きの判断:営業10名以上・月間リード100件以上・商談サイクル1〜3ヶ月の組織に適している。5名以下・リード50件以下・長期商談型の組織には別のアプローチが有効
- 最も重要なこと:「分業すること」を目的にせず、「自社のボトルネックはどこか」を先に特定する。分業はボトルネック解消の手段の一つにすぎない
The Modelの成否は、「分業の設計」ではなく「接続の設計」で決まります。部門間の引き渡し基準を数値で定義し、全部門が同じデータを見ながら週次で改善サイクルを回すこと——これがThe Model型組織を成功に導く鍵です。
SFA導入を検討中の方は、まず自社の営業課題を整理し、「何を解決したいのか」を明確にすることから始めてみてください。
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